午後、テレビで黒澤明監督の
「生きる」を観ました。
この作品は、市役所の事なかれ主義の
平凡な市民課長が胃がんと診断され
余命わずかと知り、当初は混乱します。
しかし、自分自身に正直な女性から
力をもらい、事なかれ主義の役所の
中で意義ある仕事を成し遂げようと
決意し、困難に満ちた公園作りに全力を
尽くします。完成後、雪の降る
その公園で彼は亡くなります。
彼の通夜で、役所の職員たちは
事なかれ主義を嘆きますが、結局は
翌日から元通りに戻ってしまいます。
人間は、何かきっかけがあれば
変わることができる一方で、
変わることは困難だという矛盾した
人間の性を、黒澤監督は淡々と
描写しています。そして、志村喬が
市民課長を迫真の演技で演じています。
私が中学生の時、広島の二番館で
行われた黒澤明特集イベントで本作品を
5本立ての1つとして鑑賞しました。
本作品は昭和27年に封切られましたが、
今観ても古さを感じることはなく、
むしろ新しささえ感じます。
人間が変わることができる一方で
変わることが難しいという本質は、
いつの時代も変わらないからでしょう。